第六話 東雲の景色

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 その日もいつものように日の出とともに自動カーテンが開いた。寝る前にスライド式の大きな扉を全解放して寝室とリビングを繋いだのだ。いつもそうする。朝一番で日の光を浴びる事で体が芯から目を覚ます。 「ソウちゃん、おはよう」 意外と広い背中をしている。昨日初めて男を知った私には新鮮な光景だった。まるで吸い寄せられるようにピッタリとくっついてみた。そして、キスをした。 「えっ、あっ、えっと、その……。おっはようございます……」 そんなに驚かなくても良いのに。何だか可愛いなあ。この感じ、仕事に追われてアタフタしている時みたい。 「かっ、か、か、か、神楽先輩?」 急に仰々しいな。何だか寂しいじゃない。 「やだー、ソウちゃん、昨日みたいに『リンちゃん』って呼んで」 ああ、この首筋に、よく見ると腕も太い。男の人のカラダだ……。だめだ。昨日目覚めたばかりのメスの感性がまた私を突き動かす……。 「ねえ、昨日みたいに私を汚い言葉で辱めて。それで、優しく激しくめちゃくちゃにして!」 だめだった。抗えなかった。 「しましょ、五回目」 私ったら、はしたない要求をしてしまった。 「あっ、すみません、今日はちょっとこれから用事があって……」 挙動不審で敬語を発するソウちゃん……。昨晩とは大違いだった。そのバカ丁寧な口を塞ぎたくなった。 「ふたりの時は敬語禁止! あと、昨日ソウちゃんが言ってた『同棲』いつ始める?」 ソウちゃんはまた、きょとんとした顔をした。そのとぼけた顔、いつものソウちゃん、いや、それはかつての「如月君」だった。
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