第七話 マイノリティ

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俺はまた耳を疑った。 「あの時みたいに、あの夜みたいに、私を激しく罵って。ほら、早く!」 抱くよりはマシだろうと思う自分がいたが、いったいどのような言葉をかけてやれば、俺は解放してもらえるのだろうか。全く見当がつかなかった。 「えっと、どんな事を言えば良いのかな……?」 すると彼女は驚き、その感情は次第に呆れに変わったようだった。 「はあ? 何でそんな事を私に聞くの? バカなの? もう、サイテー!」 マリちゃんがそう言うと、俺はその柔らかい重圧から解放された。書庫の扉の前で 「もうソウちゃんと会う約束はしない! わたしが勝手に押しかけるから!」 と吐き捨てると、扉が勢いよく閉まった。  さっき素直にマリちゃんを抱いていたらどうなっていただろうか……。偶然誰かに出くわしただろうか。そうしたら、譴責かな、謹慎処分かな、懲戒解雇か? 新聞には載るのかな……。今日の妄想は、楽しくないな……。
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