第七話 マイノリティ

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   八月二十日(火) 剛田健介  今思えば、女に溺れ、腐ってゆくのはあっという間だった。つい最近まで、女性経験なんて、手を繋ぐ程度のものだったんだ。それも中学校のフォークダンスの時っきり……。  それが、みるみるハマって、落ちていった。しかし気が付いたのだ。別に相手が女である必要はないと。そう、世界の約半分は男なんだ。つまり、その目線の先を「女」から「男女」に広げれば、可能性は二倍になる。アタシをそんな広い世界に目覚めさせてしまった罪深い人……。それがソウちゃん……。  しかし、驚いたなあ。こんなに素敵な人が身近にいたなんて……。昨日のソウちゃん、凄かったなあ。あんな風に乱暴な言葉で罵倒して、蔑んで、いやらしく、優しく、激しく……。まるで野獣、いえ、あれは野獣そのもの。あんな風に責められたら、もう忘れられないわヨ、ソウちゃん……。  ソウちゃんのお家、ちょっと散らかっているけど、ソウちゃんの男臭さが堪んないなア……。  朝起きたら、ソウちゃんの背中が見えた。カワイイ背中。そのうちモゾモゾし始めたから、声かけちゃった。 「ソウちゃん、おっはよ!」 堪らず抱きしめちゃった。もう我慢できなかった。 「えっ、あっ、えっと、その……。おはよう。剛田……」 何だか白々しかったなア。 「やだー、ソウちゃん、昨日みたいに『ケンちゃん』って呼んで」 ああ、もう、このミステリアスな表情! 我慢できない!
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