やまがある。

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やまがある。

 それは、うちの長男が中学生、次男が保育園児だった頃の話。  長男はよくクラスの友達の家に次男を連れて遊びに行っていた。彼の家には次男と年が近い保育園児の男の子がいて、一緒に遊ぶのに最適だったからである。ついでに、長男の友達も面倒見の良い子で、まだ幼い次男や弟と仲良く遊んでくれるタイプであったらしい。  長男とその友人の存在は、私にとって非常に助かるものだった。  というのも、その頃私と夫は共働きで、私もとある会社に契約社員として働いていたからである。そんな時、帰宅部だった長男(今思うと、私達のために部活に入るのを我慢してくれていたのかもしれない。正直、申し訳なかったとは思う)が保育園まで次男を迎えにいってくれるのは本当にありがたかったのだ。  しかも、そのまま同じ保育園の子と一緒に、友達に家まで連れていってくれる。そして、私が家に帰る時間までそこで時間を潰してくれるのだ。  小さな子供のいる家庭にとって送り迎えの問題はなかなかの死活問題である。残念ながら私の職場からも夫の職場からも遠い保育園しか入れることができかったので、長男がそれを担ってくれるのは実にありがたいことだった。保育園の先生も理解を示してくれている。真面目で優しく、力持ちの長男は他の子供達からも人気があるらしい。時には、保育園の園庭で一緒に遊ぶこともあるのだとか。  さて、ここまでが話の前提。  ここからが本題である。  長男が次男と一緒に遊びによく遊びに行く友達の家。とりあえず、長男のクラスメートをAくん、その弟で次男の友達である子をBくんと呼称することにしよう。  そのAくんとBくんはちょっと高いオートロックマンションに住んでいた。長男には携帯を持たせているので、行き帰りの際は必ずLINEするように言っている。最近では、小さな弟同士、兄同士で遊ぶことも多いようだった。兄たちがテレビゲームにハマっていて、保育園児たちにはハイレベルがすぎたからだろう。  幸い、その家にはAくんBくん兄弟の母と、それより年が離れた大きなお兄ちゃんがいて、小さな子供達の様子を見てくれているらしい。小さな子供達だけで遊んでいても長男たちが心配しないのはそれが理由なのだった。  そんなある日のことだ。  家に帰ってきた。たっぷり遊んで帰宅した次男が、私にこんなことを言ったのである。 「おやま、おやまがあった!」  と。
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