迷い家

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迷い家

 その日は、良く晴れた満月の夜だった。仕事を終え、クタクタになりながら歩いているとふっと脇道が目に止まった。 「あれ……こんなとこに、脇道なんかあったっけ ? 」  一瞬、疑問が浮かんだがそれは好奇心によっていとも簡単に掻き消されてしまう。昔は人よりも霊感が強かった。  でも、大人になるにつれてだんだんと視えなくなっていったんだ。ただ、時折何かに呼ばれて居る様に感じる事がある。 「お ? 」  そんな事を考えなら、獣道の様な道なき脇道を月の明かりだけを頼りに進んでいると急に開けた場所に出たんだ。そこには、真っ赤な鳥居だけがぽつんと建っていた。 0fa87eae-4c5a-432a-b6fb-022fb84e49af (……なんで、こんなところに鳥居が ? )  不思議に思いながら近付くと、どこからともなく風に舞う花びらが飛んでくる。俺は驚いた。  だって、今は夏なのにその花びらはどう見ても桜の花びらだったから……奇妙しい事だと頭ではわかってる。 でも、俺は自分の好奇心に抗う事が出来ず鳥居を潜ってしまう。
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