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光り輝く天女が白うさぎを胸に抱き、肩に白い鳩を載せて現れると、店内には蓮の花が咲き乱れ、天上の調べが鳴り響いた。
店主が走り出て、深々と頭を下げる。
「これは天女様に、お供の皆様。本日は当店へご降臨いただき、誠にありがとうございます。ささ、どうぞこちらへ」
すかさず「スウィーツを全種類お持ちして」と店の奥に目線を送る。一行がテーブルに落ち着くと、それまで周りの迷惑も顧みず大声でお喋りに興じていた中年女性客が「オホホ……」と品よく会話を楽しみ始めた。スマートフォンに夢中だったカップルが顔を上げ、テーブル越しに微笑みを交わす。
「お母さん、いつもガミガミ怒ってばかりでごめんね」
「ううん。僕、もっと勉強頑張るよ」
「ママ、あたし毎日お手伝いするね」
親子連れが手を取りあう。カフェの店内は、たちまち幸せムードで溢れんばかりになった。
「姉さんが微笑むだけで、世界中の戦さが終わりましょう」
「ハクトちゃんたら、大袈裟よ」
一行がスウィーツや飲み物を堪能していると、スマイルが大慌てで飛び込んできた。白うさぎの前で、ピカピカと忙しく明滅を繰り返す。
「なんや、もう見つかったんか?」
髭にクリームを付けたまま残念そうに言ったが、スマイルの信号に目の色を変えた。
「そらえらいこっちゃ! 案内せぃ!」
流星のように去ってゆく桃色の雲に、人々から惜しみない拍手が送られた。
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