もう一度、Smile! あげぃん

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 無事にお使いを果たし、お返事を持って京へ舞い戻ろうとした、その帰り道のことだった。  門前町に建つ、一際立派な大店から出てきた人間たちが、何やら美味そうに食べている。  よく見れば、なんとそれは平らに伸された鳩ではないか! これは一大事とばかりに店へ飛び込み、仲間を救い出そうとした。 「店は大騒ぎになりました。仲間を助けるどころか、私は人間に捕まりそうになり、必死に逃げ回りました。そして気が付いたのです。いつの間にやら、鶴岡八幡様よりお預かりした、大切なお返事を失くしてしまっていることに」  天を仰いで男泣きに鳴く。 「しかも仲間だと思ったのは、さぶれとか申す菓子だったのでございます、ポポー!」  息子の失態に呆然とし、八兵衛は開いた嘴が塞がらないでいる。 「手ぶらで帰るわけにもいかず、いっそこのままと……。父上、申し訳ございませんでした」 「泣かないで、八作さん。もう一度、皆で探しましょう。きっと何処かにありますわ」  天女に優しく慰められ、ようやく八作は涙を拭いた。 「皆さま、ありがとうございます。ご協力に感謝いたします」  羽をついて頭を下げる。そして白うさぎを見て、首を傾げた。 「ハクトさん、ちょっと大きくならはった?」 「お恥ずかしい、夏太りですわ」
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