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鳩の菓子を売る店へ皆で向かおうとした時、白うさぎの周りを、スマイルたちが何やら訴えるように飛び交った。
「ああ、そやったな。皆さん、お先に行ってください。私はスマイルに褒美をやらねばなりませんので」
後から追いかけることにして、背中の包みを下ろす。中からは、艶々と緑に照り映える茶団子が山盛り出てきた。スマイルたちが飛び跳ね、歓喜の色に光る。
「ご苦労さんやった。さぁ、たんとお食べ」
そう言いながら自分の口にも一つ放り込んだ。
「ああ美味しい。洋菓子も悪くないけど、わしはやっぱりこれが一番」
スマイルたちと共に茶団子を食べ、水筒のお茶を飲み、そろそろ行こうと腰を上げた。杜の小道を、誰もいないだろうと二足歩行していると、前方よりブツブツ呟く声がする。
「努力は報われるっていうけど、本当だろうか」
木の後ろに隠れそっと覗くと、痩身の若い男が一人で歩いてくる。
「今度実験に失敗したら、約束通り田舎に帰って、実家の酒蔵を継がなきゃいけないんだ」
両手に包むように持った何かに、ひそひそと話しかけている。
「親父にあと一回だけチャンスをもらったんだ。もし失敗したら、今までの努力が水の泡だ。ああ心配だ、心配だよ、勾玉ちゃん」
「なぁお兄ちゃん、自分の世界に入ってるとこ悪いけど、その手に持ってるの、何?」
「うわっ!」
突然話しかけられ、男は驚きのあまり尻もちをつきそうになった。
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