2人が本棚に入れています
本棚に追加
「我らは卑しくも神の使い。そこらへんの鳩族と一緒にされては困ります。我々は鎌倉までの片道を一刻で飛びます。しばし羽を休め、お返事を頂くまでの時間を加味しても、夕刻までには戻ってこられるはずなのです」
「なんと、たった一刻でとな。そらまた、人間の飛行機いう乗りもんみたいや」
「あれは図体ばかり大きくて」
控えめに失笑を漏らす。
「そしたら今朝になっても戻ってきぃひんっちゅうことは、途中で何かあったんか……」
それを聞いた母鳩がピーッと悲鳴を上げた。
「いや、すまんすまん。八作も若いねんから、別嬪の鳩さんの尾っぽでも追いかけ回してお役目忘れとんのとちゃうか」
八兵衛がクーッとひっくり返る。
「郎子命様!」
ハクトがたまりかねた様子で間に入る。
「それで、鳩さんらは郎子命様にどうしていただきたいのですか?」
気を取り直した二羽が、揃って居住まいを正す。
「このまま八作が戻らなくとも、大神様は寛大なお方ゆえ、お咎めにはならないでしょう。しかし、お役目を果たせなかったとあらば、神使の名折れ。とんだ面汚しに恥さらし。一族に顔向けができません……」
滂沱の涙を流して、がばと平伏する。
「八作捜索のため、何とぞスマイル殿をお貸しいただきたく、この通り伏してお願い申し上げまする!」
最初のコメントを投稿しよう!