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「ええよ」
あっさりと帰って来た返事に、平伏したままカクッと脱力する。
「よ、よろしいので?」
「かまへんよ。せやけど、スマイルみたいなフワフワしたもんに任せとくんもなぁ……。大丈夫かなぁ……。心配やなぁ……」
茶々丸の背後に控えていたスマイルたちから、ざわざわと不満げな気配が立ち上る。言葉こそ話さないが、一寸のスマイルにも五分の魂と意地がある。
その時御簾の後ろから、パフッと手を打つ音がした。
「分かった! もうこうなったら、ハクトを遣わすわ」
「なんと、ハクトさん直々にとは。そのようなご迷惑をお掛けするわけには……」
二羽がおろおろと顔を見合わせる。
「ええから、ええから。うちと岩清水さんの仲やんか。一肌脱ぐんは当たり前。ハクト、文箱取ってんか」
さらさらと筆を走らせる音が止むと、茶々丸が呼ばれた。
「悪いけどこの文、平等院の飛鳥ちゃんに届けておくれ」
「はっ! この茶々丸、たとえ出涸らしになりましょうとも、必ずや飛鳥様を見つけ出し、無事にお文をば、お届けいたしまする!」
「平等院、目と鼻の先やし、そんなきばらんでええよ」
そう言う頃には、格子の隙間から鉄砲玉のように飛び出している。
「さてと、八兵衛鳩よ」
「はは!」
「お前さんはハクトと一緒に鶴岡八幡宮まで行っておくれ。道案内を頼んだで。奥さんの方は、行き違いになったらあかんから、石清水で待っといてくれる?」
「仰せの通りに」
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