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「……悪い、遅れた」
「おっせ〜ぞ夏璃!せめて連絡くらいしろよな。暑くて仕方ねぇよ」
親友の竟は少々怒っているようだ。
小中と全ての学校が同じで、違う高校に行ってからもちょくちょく会ってはいたが、高校3年に突入して受験勉強に追われているため、まともに会えたのは数ヶ月ぶりなのだ。
それに加え、今日は真夏日。
誰がなんと言おうとも夏を主張してくる花火大会が行われる日。
暑くて敵わない。
怒るのも無理はないだろう。
「すまん……今日、夢を見てさ……寝不足なんだよ」
本当の理由を述べる。
ここで嘘をついたって仕方がない。
「夢?どんな夢だ?」
さすがに夢の内容は……ちょっと恥ずかしい……。
初恋の人の夢とか……しかも小学生の時の恋の夢とか……。
「もしかして初恋の人の夢とか〜?」
ニヤニヤしながら竟は聞いてくる。
俺が反論すると思ったのだろう。
だが、図星すぎて唐突に反応ができなかった。
「……え、まじ!?」
「なんで分かるんだよ……!」
親友だからなという理由になっていない理由を述べ、竟は目をキラキラさせながら質問攻めにしてくる。
先程の暑さにやられて、怒りの表情を見せてきた竟はどこへやら。
「え?いつ?いつ?どんな人?年上?俺の知ってる人??」
「うるさいなぁ……小学生の時……」
「小学生の時の初恋の人の夢とか……お前結構一途なんだな!!」
「別に一途じゃねえよ。今は別にだし……」
これまでにないくらいの笑みをこちらに向けてくる。
こいつ、確か昔から恋バナ好きだったっけ。
よく他の友人にも恋愛相談されてて、中学時代は『恋愛マスター』なんてあだ名が付いてた記憶がある。
こいつに相談して恋が成就したという話は聞いたことはないが。
「おっと、このままじゃ俺等二人共熱中症で倒れちまうな。あそこのカフェに行こうぜ!」
勢いよく指さされたお店は茶色にシンプルな装飾がされた森を連想できるようなカフェだった。
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