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「綺麗でしょ?」
そう言って君はまだ幼い俺のために手のひらの上に花火を作って見せてくれた。
隠喩表現じゃない。
本当に、その手に花火があったんだ。
放っておけばすぐにその世界から消えそうなその光。
だが、確かに俺の心を強く照らした。
脆く、小さい……でも、煌めき続けていた。
それはきっと、君がまだこの世界に浸っていたいという無意識に作られた想いを表していたのだろう。
幼い日の俺には、そんなこと知る由もなかった。
大きな山の、小さな場所。
小さな光に、小さな僕ら。
その場所に、夏に咲く大きな火の花を……君と見るって約束していた。
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