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そこまで話してお冷を口にする。
冷たい感覚が体を伝い流れてゆく。
夏には心地の良い感覚だ。
人工的に作られた冷たい風は、自然により形成された生暖かい風、もしくは熱風より癒しを与えてくれる。
そこに少しの皮肉を感じた。
そして竟が口にする。
「……幻覚か?イマジナリーフレンド?」
「お前まじでもう二度と話さねえぞ」
なんて失礼なやつだ。
せっかく話しているというのに。
たしかに今となっては信じられた話ではない。
だとしても、ひとまず信じて聞いてくれ。
「ごめんって……で、続きは?」
「その前に何か注文しないか?」
「確かに……何頼む?俺が奢ってやるぜ?」
胸を張り、笑顔でそう言ってくれる親友。
ありがたいがどういう風の吹き回しだ?
「あ、今お前俺のこと疑っただろ!?」
「なんで分かるんだよ……!」
「何年の付き合いだと思ってんだよ……まぁ、お前誕生日近いし、いいだろこういうのも。奢らせろ。拒否権はない」
いたずら好きのガキの笑い方だ。
だが、こいつにはその顔がお似合いだろう。
「じゃあ、遠慮なく。このパンケーキでも奢ってもらおうかな?」
そう言って俺は2000円近くするパンケーキを指さした。
「おいおい、少しは遠慮してくれ……高校生の財布事情舐めんなよ……?」
苦笑する竟を見て俺は満足した。
「冗談だ。アイスコーヒーにする」
「お、じゃあ俺はコーヒーで」
竟はこの暑い日に熱々のコーヒーを飲もうとしている。
「熱いやつでいいのか?」
「こういう日にこそ熱いコーヒーが合うんだろ?それに、店内が思ったより寒いんだよな」
「なるほどな……」
俺達は店員さんを呼び、アイスコーヒーとコーヒーを注文する。
人が多いため、注文のものが届くのは少々時間がかかりそうだ。
「で、続きは続きは?」
まるで寝る前の絵本の読み聞かせをせがむ子どものような目で見つめられる。
続きを捻り出そうと頭が掻き回される。
十年程前の記憶だ。
鮮明に残っているわけではない。
「確か……」
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