錬金術師と赤いもの

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弟子は師匠の不安を感じ取り、手助けを申し出ました。 けれど錬金術師は、それを優しく断りました。 「これは私が一人でやらねばならない事なんだよ」 「でも、お師匠様……」 「そうだね、お前には見守り……そして、学んで欲しい」 「お師匠様、せめて簡単なお手伝いだけでもさせてください」 「有難う、私の可愛い子」 弟子は、子どもの頃から錬金術師の元で暮らしていました。 というのも、弟子は赤ん坊の頃に山へ捨てられていたのです。そこで錬金術師が、その子を引き取る事にしたのでした。 育ててくれた錬金術師に憧れて、弟子入りをしてから十数年。 弟子は錬金術を学びましたが、その複雑さに何度もつまずいていました。 それでも錬金術師はいつも辛抱強く弟子を励まし、失敗しても諦めずに続ける様にと促していました。 (だけど、今度ばかりは成功も失敗も良い事にならない気がする。お師匠様は、一体どうするつもりなんだろう……?) 弟子は山で材料を調達しながら、不安に表情を曇らせました。
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