錬金術師と赤いもの

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「でも、お師匠様が死んでしまう! 自分は貴方を失いたくないのです!」 錬金術師は、ゆっくりと首を横に振りました。 「私の時間は、いずれにしても終わりに近付いていた。しかし、お前にはまだまだ大きな可能性がある。学んだ事を自分の為ではなく、善き事の為に使うのだよ」 そう言って錬金術師は目を閉じ、息を引き取りました。 弟子は泣きながら、賢者の石をしっかりと握りしめました。 (この石の力を使えば……。お師匠様を救う事が出来る……) そう考えるものの、今までの師匠の言葉が頭をよぎります。 そう、それは彼が望む事では無いと……弟子には、よく理解できていたのです。 その後、弟子は彼のお気に入りだった山裾の花畑に彼の墓を作りました。 そして弟子は墓に向かって話します。 「お師匠様、ごめんなさい。せっかく作ってくださった賢者の石ですが、私はどこかに隠してしまおうと思います。万が一にも、決してその力が悪用される事の無い様に……大切に保管しますね」 そして錬金術師が教えてくれた様に『自分の人生は、他の人を助ける事に捧げよう』と決意しました。
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