第三章 興味

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日菜子side しばらくして私はハッと我に返った。 あれ? 私……敦宏君に抱きしめられてる?! あれ?なんで? 急に押し寄せてきた現実が私を冷静にさせる。 それに気が付いたらなんだか急に恥ずかしくなってきたし。 彼は私が動揺していることにまだ気が付いてはいない。少し遠くを見つめながら、私の髪を優しく上から下にと繰り返し撫でている。 あぁ、どうしよう――――、 我慢できなくておずおずと顔をあげれば、私を見下ろす敦宏君とバッチリ目が合った。 あ、見られてた。 カァーッと自分でも顔が赤くなるのを感じる。その様子に敦宏君がニヤリと口角をあげた。 「顔、真っ赤だよ!」 「っ!」 わざわざ口にしなくてもいいのに……。 私は心のなかで悪態をつきながら、敦宏君の胸をそっと押して二人の間に距離をとろうとした。 けど――――、うん?あれ?離れない、なんで? 自分の背中をチラッとみたら、敦宏君の手が私の背中でしっかり組まれている。 あれ?なんで? これじゃ、腕の中に閉じ込められてる状態。 「あっ、あのぉ、もう離して、もう大丈夫だから」 少し困りながら彼を見あげたら、 「ダメ」と即答で返された。 うそでしょ?なんでダメ? 彼は少し楽しそうに意地悪く笑っている。 「なんでダメなの?」 「だって、日菜、かわいいんだもん」 サラッと返された返事に私は赤面し、その腕から逃れようともがく。 「かっ、かわいいって……、ふざけたこと言ってないで、早くその手を離して」 その手を押しのけるもびくともしない。
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