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日菜子side
しばらくして私はハッと我に返った。
あれ?
私……敦宏君に抱きしめられてる?!
あれ?なんで?
急に押し寄せてきた現実が私を冷静にさせる。
それに気が付いたらなんだか急に恥ずかしくなってきたし。
彼は私が動揺していることにまだ気が付いてはいない。少し遠くを見つめながら、私の髪を優しく上から下にと繰り返し撫でている。
あぁ、どうしよう――――、
我慢できなくておずおずと顔をあげれば、私を見下ろす敦宏君とバッチリ目が合った。
あ、見られてた。
カァーッと自分でも顔が赤くなるのを感じる。その様子に敦宏君がニヤリと口角をあげた。
「顔、真っ赤だよ!」
「っ!」
わざわざ口にしなくてもいいのに……。
私は心のなかで悪態をつきながら、敦宏君の胸をそっと押して二人の間に距離をとろうとした。
けど――――、うん?あれ?離れない、なんで?
自分の背中をチラッとみたら、敦宏君の手が私の背中でしっかり組まれている。
あれ?なんで?
これじゃ、腕の中に閉じ込められてる状態。
「あっ、あのぉ、もう離して、もう大丈夫だから」
少し困りながら彼を見あげたら、
「ダメ」と即答で返された。
うそでしょ?なんでダメ?
彼は少し楽しそうに意地悪く笑っている。
「なんでダメなの?」
「だって、日菜、かわいいんだもん」
サラッと返された返事に私は赤面し、その腕から逃れようともがく。
「かっ、かわいいって……、ふざけたこと言ってないで、早くその手を離して」
その手を押しのけるもびくともしない。
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