第三章 興味

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あれ? びくともしない。 細そうに見えるのに……やっぱり男の人なんだな……。 でも諦められない――――、って必死に腕を何とかしようとしていたら、敦宏君がプッとふきだした。 え? おまけにケラケラと笑いだす。 な、何? 呆気にとられた私を散々笑い飛ばした敦宏君は、今度はあっさりと腕を解き、 「そう、怒るなよ、ちょっとふざけただけだからさ、」 そう言って残りのジュースをグイッと飲み干した。 ポカンとしたままの私を置いて、空き缶を捨てに立ち上がる。 そして戻ってきた敦宏君は私に笑って右手をさしだした。 え? しっかりと目を合わせ、 「行こう」と一言。 行くってどこに? 帰るの?それともどこかに行くの? 聞きたいことはたくさんあった。 でもどれも言葉に出せなくて、 「日菜っ、行こう」 手がさらに私の方へと近づく。 それは、あらがえないっような甘い誘いだった。 彼が本当に嬉しそうに無邪気に笑っているから――――、私はおずおずと手を伸ばす。 指先が触れた瞬間、ぎゅっと握りしめられた手。 何故かつかまれたのは手のはずなのに、ギュッと胸の奥が締め付けられたような感覚。 その不思議な感覚に私は頬を緩ませる。 敦宏くんは繋いだ私の手とは反対の手から缶を抜き取り、ポイッとゴミ箱に投げ入れる。 カランと音を響かせて、上手く入ったことに小さくガッツポーズ。 顔を見合わせて私たちは笑いあい、「行こ」と歩き出した。
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