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自業物件
新たに越してきたアパートで、男は床下から聞こえてくる物音に悩まされていた。
まさか、事故物件ってことはないよな。
だがその体の事柄は、不動産屋の方で客への説明などが義務づけられているはずだ。文句のひとつでも言ってやろうと思い、この物件を紹介してくれた不動産屋へと電話をかける。
「お電話ありがとうございます。ジゴウ不動産でございます」
こちらの日々の苦悩も知らず、明るく能天気な第一声に腹がたった。
「あんたらの管理してる物件はどうなってんだ! 越してきたその日から物音が絶えない。まさか事故物件じゃねえだろうなっ」
「私共の会社の名前、お忘れですか」
なんだいきなり。先ほど、そっちから名乗っていたではないか。馬鹿にしてるのだろうか。
「ジゴウ不動産だろ。話を逸らすな……」
「ではその意味は、おわかりですか」
言葉を遮られる。何なんだ一体。
「自業自得、のジゴウです」
自業自得。その言葉に、血の気が引いた。
ここに引っ越す、数日前のことだ。
浮気だなんだというありがちな男女の口論の末に、相手の女を突き飛ばしてしまい、結果、その女は死んでしまった。すっかり気が動転し、慌てた男は、女の遺体を車で運び、できる限り遠くの林へと埋めに行った。その足で即現在住んでいるアパートを引き払い、そこから心機一転、このアパートへと引っ越してきた。
「お客様が先日埋めたもの、そちらのお住まいの床下へ、丁重に、改めて、埋めて、戻しておきましたから」
床下から、再び、ひときわ大きな、物音。
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