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本棚で、交錯する。
広い図書館の奥の奥の本棚、その端にお目当ての本を見つけた。素早く動かした手が、ものの数秒の差で伸びてきたもうひとつの手とぶつかった。
その手の方向へと視線を向けた。自分と同年代くらいの少女。
瞬間。少女から目が離せなくなった。
否応なくドキドキとして、これがドラマのワンシーンなら、ベタではあるが恋の始まりに、なるのだろうか。
「君も、この本を?」
端の背表紙に指を指しつつ、小声で問う。少女が黙って頷く。
それだけで、彼にとっては充分だった。
「じゃあ、一緒に借りに行こうか」
少女とふたり。貸出カウンターへと進む。ひとりの男性司書に本を差し出し、手続きを済ませる。それからすぐに、鞄の奥へ奥へと押し込んでゆく。
外へと通じる自動ドアをくぐる。その間際、先ほど貸出手続きをしてくれた司書がこちらをジッと見ていることに気づいたが、すぐに視線を反らして何事もなかったかのように図書館を後にする。少女も無言でついてくる。
図書館からある程度距離のある場所で、鞄に押し込んでいた本を取り出す。少女とふたり一緒になって、本のタイトルを、確認した。
『誰にもバレない武器の調達方法』
『人知れず人の殺し方』
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