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見た目判断注意。
殺気だった大男の数メートル先に、それはうつむきがちに現れた。
ふん、ガキかよ。
男が見下すように鼻で息をした途端。
子どもが助走も程々に、男の背丈を超えるほどの跳躍をみせ、男の目がこれでもかという驚きに満ちて見開く。そのせいで反応が遅れた。悪あがきの如くふるった刃物を子どもは当たり前のように避け、子どもの手の小さなナイフが、男の頸動脈を的確に裂く。
吹き出す血飛沫。子どもは体操選手がやるような華麗な一回転をみせた後、両足はまっすぐにし、両手をYの形にして綺麗な姿勢で着地。子どもがふりむいた時にはもう、男は息絶えていた。
「仕留めんのが遅い。あとナイフが髪の毛に少しかすってた」
相変わらず目ざとい。
子どもの頭上に、黒いランドセル。
さすがにこれを背負ったままでは、先ほどのような跳躍はできなかっただろう。
ランドセルを差し出した主は、先ほど子どもが対峙した男と同様の大柄の男で、長い前髪に薄いレンズのサングラスをつけている。
「相手を見た目で判断するなど、素人のやることだ」
今回の依頼人に依頼遂行完了の連絡をしつつ、彼はお決まりの台詞を投げやりに言う。
ふたりの後ろで息絶える男。その頭上では、
「帰って宿題だ」
「また教えて」
「甘えんな」
そんな間の抜けたやりとりが交わされていた。
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