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どっちが好き?
「俺とあいつの、どっちが好き?」
彼は私に、よくそんな問いかけを、不意に投げかけてきた。
彼の気持ちを百パーセントわかってあげることはできない。彼はそのひとりの存在により、彼だけが両親に、冷たくあしらわれてきたことを。
「俺とあいつ、どっちが好き?」
彼は再び詰め寄ってきた。必死そうに不安そうに。そしてどこか、寂しそうに。
「俺と、俺のなかのあいつと、どっちが好き?」
あなたが好きだよ。
面と向かってそう言うのは、やっぱり恥ずかしくて。
代わりに子どもように、幼く目を潤ませてさえ見える彼の体を強く強く、抱きしめた。このまま、男と女の、色恋漂う展開になったって、全部、受け入れる覚悟で。
二重人格。彼の、そんな体質も。
全て、一緒に。
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