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アンカー㊙必勝法
小学校での運動会。最終競技のクラス対抗リレーで、彼はアンカーを任されていた。だが走る順番が回ってきた時には既にほとんどの選手に先を越されていて、彼はもはや諦め半分の気持ちのまま、赤いバトンを受け取った。
その瞬間、視界には子どもの彼をここまで育てた男(本人に言わせれば鍛えた)の姿がうつり、同時にこのリレー直前に囁かれた男の一言を思い出し、彼にスイッチが入った。
途端ひとり、またひとりとやすやすと追い抜かしていき、あっという間にゴールテープを切っていた。
たくさんの歓声のなかに、男の姿はもはやなかった。代わりにクラスの担任やら同じチームだったクラスメイトが彼に駆け寄ってきて、凄い凄いと褒めてくれた。なんであんな一気に速く、次々と追い抜かすことができたんだと問われ、彼は笑って誤魔化した。そして再度、このリレー直前、男に囁かれた一言を、思い出した。
『目の前を走る奴は皆、仕事のターゲットだとおもえ』
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