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お料理メモ
普段から大人しくて口数が少ない。そんな様子がクールで格好良く見えた。
特にある日の調理実習での食材を器用に扱う手、キャベツの千切りをおどおどすることなくこなしたり、ピーラーなんかを使わず、包丁ひとつで果物の皮を剝いてみたり。聞けば母子家庭で昼夜関わらず働くお母さんを支えるために、割と幼い頃から料理をやり始めたのだとか。
そんな早いうちから家庭的な一面をみせる、私が密かに想いを寄せる彼と、どうにか距離を縮められないものかと考えながら日々を過ごすなかでの放課後。どのクラスメイトにも背をむけてさっさと帰ろうとする彼のスマホを、彼のすぐ後ろで拾った。
画面の、とある文字の羅列が目にはいる。
焼く 煮る 切り刻む 皮を剥ぐ
料理のメモかなんかだろうか。
でも最後の皮云々の部分。野菜か果物かの調理方法だと思ったが、皮ははぐ、というよりはむく、だと思うが。
引っかかりはしたものの深くは考えず、彼にスマホを手渡した。そこから自然に、
「今日もお母さんのために? 大変だね」
対し彼は無表情だった。
「どう調理しようかと、考えてた」
「なにを?」
彼はうつむきがちに、でもどこか強い眼差しで、答えた。
「……母さんの、新しい男」
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