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沈黙者のお引越し
ダンボール。ある時は紙袋。ある時はアタッシュケースと、これまで何度引っ越しを繰り返してきたことか。
今回の私が包まれているところは、とある箱のなか。その箱には綺麗なラッピングが施されている。
そんな私の横には、一枚のメモ。
メリークリスマス。
君が先日私に送ってくれた貯金箱。
その中身だけでは、到底これを買うには程遠い金額ではあったが、その者に対する、幼いながらも強い思いに免じて、これをクリスマスプレゼントとして、君に渡そうと決めた。
そして事が済み次第、このプレゼントは再度ラッピングをした後、速やかに、指定した番号のコインロッカーへと返却すること。
私の長年共に時を過ごした相棒を使い、君が欲しかった自由を手に入れることを、切に願っている。
君のためだけの、サンタクロースより
やがてラッピングを剥がす紙の音と、箱が開かれたことによる、真っ黒に輝く私とは対局の、眩しい光。
私の元の持ち主があらかじめ教えたように、小さな手が私のなかへ、黄金色に輝く弾痕をひとつ、またひとつと込めていく。
そうして物言えぬ私を、指一本で人の命を奪う凶器へと、変えていった。
その間際、私は強く願う。
どうかこれが、私の最後の引っ越しとなることを。
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