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「それで腹いせに『野垂れ死にでもしてやろう』とか考えておるんではないだろうな」
「安心して。そんな事しても何にもならないって、シェナに教えて貰ったから」
「……シェナ? 誰だそれは」
「おじさんには関係無いでしょ。――とにかく、私は出て行くから。……勿論、止めないんでしょう?」
「当たり前だ。どこへなりとも行って勝手に死んでこい。ワシはただ、お前が勝手に家出をしたとしか知らされんのだからな」
「ふん、そう言っていつまでも笑っているが良いわ」
星那は捨て台詞と共に踵を返す。
ワシはその小さな背中に向かって大声を出した。
「居場所が無いからと言って、二度と戻って来るなよ!!」
言いながらも、『絶対にそうなってワシに泣き付いてくるに違いない』と思ってワシは苦笑する。井の中の蛙大海を知らず、とはこの事を言うのだな。
しかし星那は扉を閉める前に、もう一度ワシを睨みながら言い放った。
「何よ、今に見てなさい――絶対に、私は私の理想的な場所を見つけ出してやるんだから……!」
……自覚しているだけあって、本当に星那は負けず嫌いな所があるみたいだな。
しかし負けん気だけでは世の中を渡ってはいけん。ワシは心底、星那を『馬鹿な小娘だ』と思った。
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