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自室で仕事をこなしていると、ノックの音。
壁に掛けられている時計に目をやると……午後九時四十分か。
この時間ならば屋敷に常駐している者だろう。ワシは面倒臭い思いがしつつも手を止めて、扉へと向けて声を上げた。
「誰だ? こんな時間に……」
すると次に聞こえたのは子供の声。
「――星那です」
どうやら、まだ何か言う事があるらしい。
しかし……本当に話し方が変わっておるぞ。少しは自分の我侭を反省したのかもしれん。
「入れ」
そう思いながらもワシは入室を許可してやった。
「……失礼します」
星那は俯きながら、ゆっくりとワシの机の前まで来る。
「――一体、何の用だ。ワシはお前ほどに暇では無いんだぞ」
「はい……すみません。でも、どうしても、もう一度だけ確認しておきたかったんです」
「確認?」
「ええ。私の発明した物についての事です」
……またそれか。さっきも話したではないか。
星那の記憶容量は前から少ない方だと思っていたが、まさか昼間の事も満足に覚えておられんとはな。
ワシはせせら笑いながら言ってやった。
「お前は、本当に機械の事しか能の無い奴だな。さっきも言っただろう、お前の発明した物でも、ワシの名前での権利を取り消す事はしない」
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