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「永遠のとびら」
私は、放課後に写真部の部室でぼんやりしていたところ、春の陽気に負けて、机に顔を伏せて眠りこんでしまっていた。
写真部は半分帰宅部みたいなものなので、みんな放課後は部室でお茶をしたり、宿題をやったりと好きに使っている。
私も、部室で宿題をやろうとしたけど、あまりにあたたかく、のどかな日和だったのでつい眠ってしまったのだ。
***
眠り込んでしばらくしたあと、薄く目を開けた隙間に、永遠(とわ)先輩の長い黒髪が翻るのを見た気がする。
私は、あぁ、永遠先輩はやっぱり綺麗だな、なんて思いながら、また眠る。
***
私は、気がつくと白い世界の中にいた。
そこは上下も左右も、眩しいほどの白で満たされている。
平衡感覚すら失ってしまいそうな、圧倒的な白だった。
「なに、ここ?」
私が目を凝らすと、遠くの方に小さな蜜柑色の四角形の物体があるのに気づく。
辺りを見回しても、ものがなにもなかったので、私はその四角形に近づいていった。
しばらく歩くと、だんだんその四角形は大きさを増してきて、それは私の背より頭ふたつくらい大きいドアだと分かった。
ドアは薄皮に包まれた蜜柑みたいな色で、ささくれて、ところどころ蜜柑色のペンキの下に隠れた白い樹の皮がめくりあがっている。
つまり、古びたドアということ。
「なんだろう…」
私は好奇心から真鍮のドアノブを回して、ドアを開けてみた。
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