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ドアの向こうには、闇夜が広がっていた。
雑木林が茂り、辺り一面は星の明かりしかない。
山の中のようだった。
永遠先輩は、落ちていた枝を拾って、子供がカブトムシでも探すようにぶんぶんと振り回す。
虫の声しかしない、草の匂いで満ちた獣道を、私は永遠先輩の後をついて歩く。
なぜか、髪も、着ていた服も、ドアを開けて足を踏み出したとたん、すぐ乾いていた。
「あの、永遠先輩」
「なんだい?」
私は少し緊張しながら永遠先輩に声をかけた。
ふだんあまり話さないので、喋りなれていないのだ。
「永遠先輩は、どうしてここに?」
「それは…どうしてだろう?いつからここにいたのか、どうしていたのか、そんなことは忘れてしまったよ」
「なんだか、長いことここにいるみたいな言い方ですね」
「ふふふ、いくつに見えるかな?実年齢より年上に見られたら、ショックだ」
私は永遠先輩の冗談なのかよく分からない言葉を、返答に困ったのでスルーする。
「ここは、いったいどこなんでしょう?」
「君はどこだと思うの?」
永遠先輩の歌うような声に、私は首をかしげる。
「さぁ…?夢の中、とか?」
「夢、夢ね。それは誰が見てる夢なんだろうね?」
「え、…私が見てるんだから、私の夢じゃないんですか?」
それはどうかな、と言うと永遠先輩は髪を翻して私に微笑みかけた。
その微笑みが、なんだかこの世のものではないー妖怪とか、悪魔とか、そういった類いのものに見えてー、私は背筋が冷えるのを感じた。
永遠先輩は、どこかからやってきたひらひらと舞う蝶を木の棒の先に止まらせた。
「ごらん、次のドアだ」
永遠先輩が木の棒で指し示す方には、またあの蜜柑色のドアがあった。
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