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田城唯子は、ほんの数日前まで本当にただ普通に生活する、15歳の中学生だった。
朝は目覚まし時計を無意識に止めて寝てしまって、お母さんに呆れながら起こしてもらう。
学校遅刻しそうだからご飯いらない!と、叫んで食卓にいたお父さんにちょっと怒られて。
学校で友達と推しの話で盛り上がる…。
受験勉強は大変だけど、ただ平凡に繰り返される幸せな日常。
だが、それは数日前に変わってしまった。
きっかけは「音」だった。
何かにヒビが入り、粉々に砕け散る。そんな「音」。
ただ、周りにはたくさんの人がいたのに聞こえたのは唯子だけ。
唯子にだけ聞こえた音以外、その場では何も起こらなかった。
それからだ。
常に誰かに見られている気がする。
時間を追うごとに、その視線は増えていった。
一日経つ頃には、視線ではなく「気配」を感じるようになる。
そして、今日、学校の帰りに複数人に追いかけられた。
突然身に降りかかった恐怖から、必死に逃げて…隠れては見つかって逃げ、捕まりそうになっては、間一髪ですり抜けて……。
一体、自分に何が起こってしまったのだろう。心当たりなんて少しも無い。
考えても考えても、わからなくて…だけど、怖いから、必死に走って走って……
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