甲子園まで、あと1イニング

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 9回表。  2対1で、我ら北高がリード。  この回を抑えれば、甲子園に行ける。  俺はマウンドに立つ。 「あと1回だ」 「おう!」  この回を無失点で抑えればいい。  しかし、油断は禁物。 「プレイ」  主審が宣言する。  敵にはもう、あとはない。  何としてでも塁に出てくるだろう。  敵は5番打者。  長打を警戒した方がよい。  前の打席では、外角高めの球を打ってヒットにしている。  となると、そのコースには自信を持っているはず。  1球目は外角高めの際どいところを攻めてみよう。  おそらくは手を出してくるはず。これでストライクを稼がせてもらおう。  俺はワインドアップポジションから投球する。  決まった!  ギリギリでストライク、入った!  やつは得意のコースを見逃してしまい、悔しそう。  2球目。  内角高め(インハイ)で煽ってみるか。  打たれた!  打球は左中間へ抜けていく。  くそう! ヒットか。  相手チームのスタンドが湧き上がる。  ブラスバンドがファンファーレを鳴らしている。  まずいな……  同点になるランナーを出してしまった。  ノーアウト、1塁。  敵は盗塁で2塁を狙ってくるだろう。  俺はセットポジションで構え、牽制球を投げられるようにする。 「リーリーリーリー……」  敵のファーストコーチャーがリード指示で煽ってきた。
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