1.始まりの手紙

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「おにぎり温めますか?」 「お願いします」  六畳のワンルームに帰り、コンビニで買ったおにぎりと、鍋で作ったインスタントラーメンを食べる。味が薄い。お湯を入れすぎた。 「優子! 大した美人じゃないんだから、役者なんて浮ついたこと言ってないで、地に足つけて地元で働きなさい」  高校を卒業した私は、止める両親に逆らって役者を目指して都会へ出た。  私の地元は人口、約一万五千人。ちょっとした有名人のフォロワー数程度の過疎の地域。  昔は炭鉱で栄えていたらしいけど、今は特に名所も何かの聖地もなく、特産品もない、ど田舎だ。    父も母も地元で生まれ、地元しか知らない。  地に足を付けて地元企業に就職した二人は職場恋愛の末、結婚。  母は私という1児をもうけ、専業主婦となり、父はあと数年で定年を迎える。  育ててもらった恩も感じているし、大事に育てられた自覚もある。  善良な人達だし、大好きだと思う。  だけどどうしても、二人の人生はなんてつまらないんだろうと思ってしまう。 都会に出たら、有名なお店、お洒落な人々、華やかな生活が待っているのに、どうしてこんな田舎で満足できるのか私には理解できなかった。
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