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「ねえ、優子ちゃん。何の役を希望するのか決まってるの?」
稽古の合間に先程配られた台本について、看板女優の原島さんから声がかかる。
彼女は小柄で平凡な見た目にも関わらず、溢れるエネルギーは舞台に立つとみんなを惹きつけてやまない。
「……いえ、まだ考えてません」
「ふーん。私ね、芸能事務所から声がかかってるの。次の舞台、そこの人が観に来るから絶対、実力を見せつけたいんだ!」
どうして私にそんなことを言うんだろう。牽制? まさかね。私なんていつも端役ばっかりでライバルですらないのに。
「原島さんなら上手くいきますよ。頑張ってください……」
私は彼女が一瞬ムッとした顔をしたのを見逃さなかった。
別に気に障ることなんて言ってないのに。
「ありがとね」
笑顔を残し彼女は稽古に戻っていった。
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