1.始まりの手紙

3/5
前へ
/21ページ
次へ
 食事を終え、ジーンズを脱ぐとポケットから白い紙が落ちた。  地下鉄で拾った謎の手紙。  捨てるつもりだったのにポケットに入れたままだった。  私の書く大きさがバラバラなクセ字とは違い、文字の大きさもバランスも整っている、書道のお手本のような美しい文字。  不特定多数に向けて書かれたその手紙は、挨拶も、どの時間帯にでも対応できるよう網羅されていて、私に該当するのはこんばんはと、お疲れ様だ。  ふと、捌ききれなかったチケットのことを思い出した。    中学の頃から演劇部だった私は、都会で生きる(すべ)として、その時一番自信を持っていた演劇を選んだ。  身長も女子の中では高い方だったし、目鼻立ちのハッキリした顔は舞台で映えた。女優さんみたい! 美人! と田舎ではチヤホヤされていた。  私ってイケてる? 都会でも通用する?  何も知らない田舎娘が勘違いするのもしょうがないと思う。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加