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第三倉庫
「ドライバーさん、お釣りはいらないから、メトロの駅まで頼む」
相場の倍程の紙幣を渡す
漸く僕のスペイン語が役に立った
僕は放心状態のカルロスに最後の悪魔の囁きを行なう
「僕らが降りたら、この街であったことは全部忘れる事です、ボスの事も仲間の事も。歌姫と平々凡々な生活を送る事、それだけを考えて。…良いですね?」
自身のやろうとしている事に放心状態のカルロスは、力なくカクカクと頷いた
それを見計らって、僕とアンジェリカはタクシーを降り、そのテールランプを見送った
「物分かりの良いので助かったわあ」
タクシーでは小さくなっていたアンジェリカが大きく背伸びをする
第三倉庫って、このバリケードの向こうですが何やら最近動かした形跡…今は使われていないみたいですけどね?大通りからは離れていますし夜だから人通りもないですし…荒事には完璧なロケーションですよね
喋りながらも僕の手は左肩のボストンバッグからとあるモノを取り出した
それを見たアンジェリカが露骨に嫌な顔になる
「戦争するワケでもないのに、そんなの持って来たんですか?ちょっと過剰防衛になるんじゃないですか?」
相手は機関銃まで持ち出してますからねえ…ここは念には念を入れ、ですよ?それにこれ、基本使い捨てですから
「そりゃ結果を重んじるダテさんが選んだ銃器だから…」
でもこれじゃ連中一人も生き残らない…
そうボヤいたアンジェリカが何かに思い当たったようだ
これを…僕はポケットから一通の手紙を渡した
開封してあるが、封蝋は紛う事なくスペイン王室のモノだ
内容は…推して知るべし、だ
この手紙が僕の手元に届いたのは、アンジェリカから依頼を受けた後
だからカルロスは助かったのだ
「…私にまで隠さなくてもいいのに…」
この程度の仕事に、アンジェリカの手を汚させるわけには行きませんので、ね
M203を二丁、残敵掃討用にG11、という長物に相棒のガバメントとデトニクスだ
じゃあ盛大に花火を打ち上げますか
一声掛けて、僕はM203の照準を第三倉庫に迷わず向けた
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