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終章
「ねぇダテさん?」
はい?
帰り道の急行列車の中、もう諦めたのか、キャリーケースからアンジェリカが話し掛けてくる
「あの二人、ちゃんと会えたのかな?幸せで、ダテさんの言うところの平々凡々な暮しを手に出来るのかな?」
歌姫とランデブーしていれば、彼等はアンダルシアで新しい生活を始めるための準備を始めているでしょうねぇ
「何ですか、それ?興味無さそうに…」
黒の毛糸玉がため息混じりに声を掛けてくる
心底僕に呆れたように
僕らに出来るのは、カルロス君と歌姫が幸せである事を願ってあげるくらいしか出来ないんじゃないでしょうか?あとはあのカップル次第ですよ?
「それは…そうですけど…」
何やら釈然としない様子のアンジェリカに僕は殊更明るく声を掛ける事にした
そろそろ空港ですよ、倫敦には今日あたり日本から美味しいツナ缶が届いているはずですよ?
この一言は流石のアンジェリカにも効果絶大だった様子で…
「日本のツナ缶!あのシンプルな味わいに勝る食べ物は世界中探して存在しませんよね!さあ早く帰りましょう、直ぐに帰りましょう!ダテさんをいつまでも独り占めしたらオリヴィアが毛を逆立てて怒るのが目に見えています!」
猫ちゃんは…気紛れとは言うけれど…アンジェリカを持ってしても同じか…
僕はこう言うところから「猫使い」と言う有り難くないニックネームを頂戴しているのかもしれない
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