俊ちゃんはどこ?

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俊ちゃんはどこ?

    井上亮二side  俺がずーーーっと懐いてたお隣の俊ちゃんがある日夜逃げのように引っ越していった。なんと、家族にも引っ越し先は伝えてないらしい。  そのうち成功したら居場所を教えるからと言って飛び出していった。  俺からしたら第二のお母さんとも呼べる存在の俊ちゃんのお母さんにそう告げられた時の絶望感と言ったら言葉に出来ないし、第三者に上手く伝える自信もない。とにかく俺の唯一無二の幼馴染で大事な存在だったんだ。  取り残された気分の俺はというと、大学が終わるとすぐ俊ちゃんの部屋に入り浸っては俊ちゃんの本棚の端から端まで読むのがルーティンになった。バイトは以前よりもシフトを少なめにして、俊ちゃんの引っ越し先の手がかりが何処かにないかと本棚と机を探した。  少しでも学費の足しになるようバイトに専念した方が俊ちゃんを忘れられる、甘えてる場合じゃないとも思ったけれど、俊ちゃんの行方を知る手がかりと、俊ちゃんとの思い出に浸りたかったんだ。  俊ちゃんの本棚には少年漫画に少女漫画、BL漫画……は初めて読んだけど、案外読んでみると楽しい。  俺もずーーーっと俊ちゃんに片思いしてきたから、恋愛ものは気持ちも分かるというか、感情移入して読んでしまう。  俊ちゃん。俊ちゃんはどこに行ったの? 俺等仲良し幼馴染のはずじゃなかったの?俊ちゃんが俺にも言わずにいなくなる日が来るなんて、思ってもいなかったよ…。  上の段から順に読んでいって、下の段に来た頃、そこに置いてある本は漫画じゃなくなった。漫画の描き方やら絵の描き方、編集部からの手紙…。  なんで俺は律儀に上から読んでたんだろう。こんな手がかりが簡単に見つかるとこにあったじゃないか。  編集部を調べると今連載中の漫画のお知らせ、作者からの言葉等、色んなコンテンツがある。 その中に新人作家『shun』の名前があった。俊ちゃんと同じ名前。    何も考えず受賞作品と初読み切りを読んでハマった。  キュンキュンするポイントが俺と同じだ。ジャンルとしては少女漫画。掲載誌はちょっと大人向けな少女漫画だからそのうちエッチめな作品も描くようになるのかもしれない。  試しに月刊誌の他の漫画も゙全部読んだけれど、一番響いたのは読み切りのshun先生の作品だった。    もう一度読み返し、人生で初めて漫画に対する感想文、ファンレターを書いて編集社に送る。俺はshun先生の初めてのファンかもしれない。 俊ちゃんと同じ名前のshun先生。  もしかしたら俊ちゃん本人かもしれない希望を見出し、俺はshun先生を追い始めた。そしてこの編集社に就職し、先生の担当になることが目標になった。  単純かもしれないけれど、ここではない土地、東京に行けば俊ちゃんが見つかる可能性もあるし、shun先生が俊ちゃんの可能性は捨てきれない。  俊ちゃん待っててね。また再会出来る日を目指して頑張るから。
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