《第》《壱ノ爪〜《屍喰らい》

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全てを仄暗い湖の底に…返す程に…凶々しかった…。まだ力の制御もおぼつかない…六つの夜…その日少年は初めて《夜空》を見た。耳を澄ましてみると…近くからせせらぎの音が聞こえて来る…。その音を肌で感じた少年の目に 涙が込み上げてくる。ふと…辺りを見渡してみると…周囲に人は居なく…何処かの 山奥の様であった。無数に散らばる骨と肉。何処からともなく聞こえて来る悲鳴…そこで見た物はこの世の景色ではなかった。そして…少年が…あやかし渦巻く世界の内側で…《屍ノ花》を見たのは…恐らくこれが最初だったの だろう?七十七の骸と…何処までも深い月…そこから広がる花畑には…この世の物とは思えない程に…美しい花が咲いていた。その実は白く…朱く…蒼く…骸から咲いているとは思えない程に…色鮮やかだった…そして…世界の中心で 蠢く黒くて巨大な何か?その肩の上に座っている…少年の目を今でも忘れられない…その瞳は金褐色に輝いていて…何処までも白い髪色をしていた。不意に風鈴の音が聞こえて来て…振り返った時には…座敷牢の中に戻っていて…
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