《第》《壱ノ爪〜《屍喰らい》

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消し飛んだ筈の屋敷が元通りになっていた…。何が起きたかわからない…しかし…少年はこの時悟ったのだ…あれは…この世の景色ではない…と。それから2年余りの年月を…来る日も来る日も…少年は書庫の中で過ごした…。 男の父親は自尊心が高く…自分の子供が読み書きすら出来ない事が恥ずかしかったのだ…。 それ故に近しい幾数人の人間にだけ…秘密を漏らし…少年の世話をさせていた。その為…日に 三時間…少年は《書庫》の中に籠もる事を許されていた。来る日も来る日も…書庫に籠もり…眠る時には座敷牢に戻る。そんな日々をそれから八年も過ごし幾ばくかの時が流れた…。そして…彼が十三の時…全てを決意した男は…とうとう彼を 臣籍降下させてしまったのだ…。与えられた名は《成宮》字に深い意味は無い…そうして少年は《有栖川》の名前を棄てて…晴れて自由の身となった…幾数人の従者と幾ばくかの路銀を片手に持って…現在住まう邸宅に移り住み…今に至る。
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