あと1回

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あと1回

美帆(メイファン)!朗報だ!今回の試験でも残り2枠の四貴妃は決まらなかったらしい!暁明(シャミン)様がこの第六小国の君主にご即位されるまで、あと1回チャンスが残っているぞ!」  1次試験の落選通知を握りしめて項垂れていた先週の表情と違い、非常に晴れ晴れとした表情で娘、美帆に駆け寄る父親。  昨年の試験では、最終の3次試験まで上り詰めたがあと1歩及ばずのところだった。 「良かったな。お前が問題用紙の裏の問題に気がつかず、解いた問題は全て正解だったと聞かされた時は目の前が真っ暗になったがな」と豪快に笑う父親。  解答用紙は枠も何もない白紙であるため、大問の後半を飛ばしてしまったところで気がつかない。 「そのそそっかしさもきっと減点対象となったのでしょうね。私が不甲斐ないばかりに、お父様にはご心労をおかけして申し訳ありません」  美帆は深々と父親に頭を下げる。 「いや、お前の努力は今までしっかり見てきていたからな。終わり良ければすべて良し、次に合格すれば問題なんて全くないからな!さあ、頭をお上げ。来年の試験に向けて、今日からまた猛特訓だ。年々レベルが高くなるのがこの選抜試験だからな。気を抜くんじゃないぞ」 「はい、心得ております」  6年前に交わした約束の為に、昨年度から後宮の四貴妃の選抜試験に挑んでいる美帆。 「あと1回……」美帆はそう呟き、ぎゅっと拳を握りしめた。
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