正妃にはなれない

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「何、弱気になっているんだよ。わかってくれよ、あと1回の機会を作るためにどれだけ手を回したと思う?すべては美帆のため。美帆が四貴妃に、正妃になるために俺は……」  厳正な審査が行われるはずの選抜試験。  その審査に次期君主が関わって、自己都合を押し付けたというのか。 「何を馬鹿なことをしているの!四貴妃の最後の1枠に受かるはずの方を次期君主権限で不採用にしたの?そんな横暴なことをして、家臣がついて来ると思う?」暁明の身体を引き離し、思わず声を荒げる美帆。 「いや、最後の1枠は『筆記の1次試験の点数が美帆より高い者にしろ』と言っただけだ」と暁明は弁明するが、実際美帆は満点なので土台無理な話だ。 「だから、弱気になんてならないでくれ。7年前の約束を思い出して欲しい。そのために美帆は努力をしてきてくれたのだろう」  じっと美帆を見つめる暁明。  美帆はその暁明の瞳を見つめ返しながらしばらく黙り、一筋の涙を流した。 「一生懸命、努力した。暁明の正妃になる事を夢見て。でも、無理。……怖い」 「怖い?再試験は前回と変わらないよ。そりゃ、再試験対象者は2次試験合格者のみに絞ったけど」 「違う、そうじゃない。落ちるのが怖いんじゃない」  ぱた、ぱた、ぱた……と大粒の涙を流しながら、両目を見開いて吐くように訴える美帆。 「怖いのは……採用された後の、後宮。私は、美鈴姉さんみたいになりたくない!」
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