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もうすぐ学童から帰ってくる時間。
あぁ…。気持ちが重い。からだが、動かない。
手にしたスマホの画面から、一度目を離した。
何もしたくないと思っているのに、スマホを見るのはやめられない。気がつくと、もうこんな時間になっていた。
もう、子どもと旦那さんのご飯の準備をしなくちゃならない時間。
「あぁ…やりたくないなぁ。」
わざと声に出してみる。
声は、どこにもぶつかることなく部屋の中に拡散されていった。
3DKの市営住宅の3階。
17歳で出来ちゃった結婚をして、高校を中退した。
その子はもう、3歳になる。
その子がADHDの診断を受けたのは、2歳の時。
落ち着きがなくて、何度注意しても言うことを聞かず繰り返し繰り返し、私の嫌がることをする。イライラとして、つい手をあげる。
そんな自分もほとほと嫌になる。
それでも、寝顔を見てると可愛いと思うのはまだ大丈夫なのかな。
今日は何にしよう。
冷凍コロッケがあったかなぁ。
冷蔵庫の扉を開けて、顔をつっこむ。
こういう時だ。リスカしたくなるのは。
でも、だめだ。
もう今月は、三度切ってる。
これ以上やったら、また度を越して救急車騒ぎになっちゃう。
バフン!と音を立ててソファーに倒れこんでみる。
それから、テーブルの上の携帯にまた手を伸ばす。
何もしたくない…。
なら、なんで携帯見れんの?っていわれるけど。
なんでだろ?
呼吸するのとあんま変わらないんじゃないかな。
どーでもいいけど。
「ママ!ただいま!」
玄関ドアが勢いよく開かれて、私の私のじゃない時間が始まった。
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