幼馴染なんて単なる偶然だ。運命じゃない

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 ふざけんな! 君嶋(きみしま)瑛太(えいた)? 誰だよ、そいつは!  おい、真凛(まりん)、俺を入学式で見て以来憧れてたって言ってくれたじゃないか! 「なんか違うかな」ってなんだ? 「なんか」ってなんだよ。「違う」ってどういうことだ?  俺は守山(もりやま)大輝(だいき)。中学生活最後の夏休みを前に、三年で同じクラスになって一目惚れした真凛に告ったら両想いになれた。一緒に図書館へ通って勉強をして、夜道は危険だからって手も繋いだ。  夏休みになれば夏祭りに花火大会など、真凛とやりたいことがたくさんあった。真凛の私服はどんなだろうかと妄想しまくって、へそ出しスタイルが今の流行だが、おとなしい真凛はワンピースかもしれないなどと、答え合わせにウキウキしていた。  夏休み前日の放課後に、帰宅しようと準備をしていた真凛に声をかけた。  明後日は夏祭りだろ? 一緒に行かないか?  うん! 行く行く! 誘ってくれて嬉しい! 彼氏と行くのが夢だったの。大輝くんと行けるなんて最高だよ。  俺も嬉しい。じゃあ何時にしようか? 夕方に始まるけど、少し前に待ち合わせして公園で喋ろうぜ。  そう、頭の中でしていたシュミレートは口から出ないまま霧散した。 「あ、守山くん、バイバイ! また夏休み明けにね」  そう言って、笑顔とも言えない顔を俺に向けて、真凛は足早に教室を出ていった。  あの口の端が上がりきらない微妙な表情はなんだ? それよりも夏休み明けってどういうことだ? 俺たち付き合ってんだろ?
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