幼馴染なんて単なる偶然だ。運命じゃない

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 俺の五回目は9枚だった。クソッ! やはりこれが限界か。 「もう一回!」  六回目は3枚だ。疲れてきたぞ。集中力も下がっている。クソッ。  君嶋の顔を見ると、もうやめておけよ、という顔でニヤついている。その顔をやめろ。殴るぞ。  暴力で訴えるより心を折るべく、俺は七回目の挑戦をした。 「あと一回!」  ざわめきは今日最大だった。そりゃそうだ。俺もあと一枚だったんだから。  俺の七回目は11枚。君嶋に並んだぞ。ふふふ。あと一回やってパーフェクトを狙うか? それとも同点でやめて引き分けるか?  俺が迷っていると、君嶋は五回目に挑み始めた。目がマジだ。あいつ、パーフェクトを狙ってやがる。  あっ! 大丈夫か? あいつ転びやがった。バカだな。こんな出店の遊びでマジになるなんて。エースストライカーなんだろ? 痛そうな顔で左足首を抑えている。もうやめろ。同点でいいだろ?  真凛の顔を見る。真凛は冷めた目で見ている。ガッカリ、といった顔だ。  周りの観衆を見る。やりあっている俺と君嶋を見ているのは当然だが、真凛も注目されていた。そうか、俺と君嶋が真凛を取り合って戦っていることをみんな知っているんだ。真凛はいわば景品のお姫様。騎士と騎士の戦いで、勝利した者が得られる姫だ。  姫と言っても過不足ない可愛さではあるが、それを自覚した真凛は可愛くないな。勝ったほうの彼女になるわけじゃないだろ? 大事なのは真凛の気持ちだ。お前が惚れた男が彼氏だ。  君嶋は立ち上がった。痛みを堪えた顔で、汗を流しながらボールを蹴った。おいおい、そこまでマジになるなって。あっ! やりやがった!  君嶋は最後の一枚を落とした。……パーフェクトだ。  真凛は君嶋に駆け寄った。心配そうに足を見ながら、涙すら浮かべている。転んだときは冷めた目をしていたのに。  俺は二人に近寄った。
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