幼馴染なんて単なる偶然だ。運命じゃない

12/13
前へ
/13ページ
次へ
「真凛、もう行こうぜ」  あんな状態でパーフェクトを出されたら完敗だ。ここは引いてやる。しかし真凛は俺の彼女だから連れて行く。  俺は真凛の腕を取って引き寄せようとした。真凛はそんな俺の手を振りほどく。 「おい……」  俺は真凛が知らない誰かの手だと勘違いしたと思ってもう一度掴んだ。しかし真凛は俺の目を見て振り払う。 「どうした? 俺は彼氏だろ?」俺は思わず聞いた。 「……憧れてたとは言ったけど、やっぱ、なんか違うかなって」  は? なんか違う? どういうことだ? それは俺を振っているってことか?  君嶋の顔を見た。君嶋は痛みで顔をしかめながらも、真凛に驚いた目を向けている。  君嶋は俺を見た。君嶋の顔には憐れみも、勝ち誇った表情もない。  俺はわかった。そして頷いた。  俺は八回目の挑戦をした。結果は5枚。やはり君嶋の勝ちだ。あの足で最後の一枚を落とした君嶋の勝ちだ。あいつの実力は本物だ。ただ持ち前の運動神経で運良くできた俺とは違う。あいつはサッカーに打ち込んで、努力してきた男だ。運なんてものじゃない。しっかりと身についた実力だ。  そう、俺には君嶋のように打ち込む対象はない。チャレンジすればある程度なんでもできてしまう俺は、身につくほどの努力などしたことがなかった。勉強もできて進学校への推薦がほぼ決まっているが、品行方正にしていたことと、金持ちの息子で顔が利く内申のおかげだ。努力で勝ち取ったものじゃない。  真凛が俺に憧れたのも、入学式の頃からじゃなく、同じクラスになって浮腫みが取れた姿を見てからかもしれない。緑川の変化を見てそう思った。  近づいて喋ると、みんなハッとした顔で俺を見る。そして態度を変えるんだ。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加