幼馴染なんて単なる偶然だ。運命じゃない

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 その時、真凛はポケットから何やら取り出した。スマホだった。おい! 持ってたら教えてくれよ! 「ねぇ、瑛太、バスの時間……」 「ホントだ。走るけど、いい?」 「急ごう!」  二人は走って正面玄関を出ていった。  なんだ? あいつは…… 「瑛太くんかっこいい〜」 「ね! あ、やば、こっち見てるよ……」  真凛の友達の緑川と田島だ。 「……あいつ誰?」俺は声をかけた。 「は? えー……っと……」緑川は俺から目をそらす。 「瑛太くんだよ。サッカー部のキャプテン」田島は親切だ。  サッカー部? サッカー部なんかあったか? 「それで、真凛の幼馴染……」田島は俺に合わせていた目を緑川のようにそらした。  そういうことか。幼馴染な。……幼馴染? 知らねー! 幼馴染ってなんだ? あ? 何? 家が隣? なにそのラノベシチュ……。今どき漫画でもそんな設定ねぇよ。  緑川と田島は、俺に話しかけてはいないが、俺の知りたいことを喋っている。俺に説明しているかのように。  遠回しに説明してくれた内容はこうだ。  うちのサッカー部には因縁の相手がいる。隣の中学で実力はほぼ同じ。勝ったほうが全国大会へ行けるというレベルの両校は、全国大会を前に親睦試合を毎年行っている。その親睦試合の結果は大会の勝敗に影響していて、ここ十年の結果は親睦試合の結果イコール大会の勝敗だった。両校共に大会以上の熱意で臨むのは当然のことで、今年は我が校が勝利を収めた。  それにハットトリックをかまして貢献した君嶋は、14年越しの初恋を成就するべく、試合後に皆の前で盛大に告白をした。  泣く女子生徒も大勢いたようだが、ハットトリックで勝利を飾ったMVPである君嶋の、長年の想いに胸を打たれた者は少なくなかった。  それなんてスポーツ漫画? 今どきそんなやついる?
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