幼馴染なんて単なる偶然だ。運命じゃない

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 俺はそれを聞いても気落ちすることはなかった。自信満々なわけではない。勘違いでもない。そんな四面楚歌の状況で告られたら断れないからだ。真凛を哀れに思った。俺という恋人がいながら、そんな逃げ場のない状況に追い込まれ、学校中どころか地区中に消費されたのだ。  人前で君嶋の顔に泥を塗ることはできなかったはずだ。俺の顔には塗ったとしても。  俺は平気な顔で正面玄関を出た。ヒソヒソと緑川と田島が未だに話しているが、これ以上聞きたい話はない。俺が去ったから今度は負け犬だのなんだのキモがっているに違いない。クソどうでもいい。負け惜しみじゃない。ただ本当にどうでもいいだけだ。他人の評価はコロコロ変わる。俺を見下していたやつらも、テストの点数が無視できない学年になると、進学校に推薦入学できるレベルの俺を見る目を変え始めた。いじめのようなものも確かにあったが、ガン無視していたら簡単に諦めたし、内申のために先生に取り入りたい奴らは、目をかけてもらっている俺に媚びへつらい始めた。  俺は家庭のことを一ミリ足りとも出したことはないが、どこからか聞きつけた奴が、俺の母が映画女優で、父が最近上場したばかりのベンチャー企業の社長だと噂に流して、すり寄る奴すら現れた。  生まれた時から病気で浮腫んでいた俺は、デブだの豚だのとバカにされてきたけど、第二次性徴期を過ぎて病気が寛解し浮腫が取れてくると、女優の母によく似ていることが周りにもわかったようで、それに気づいた奴らは態度を急変させた。
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