幼馴染なんて単なる偶然だ。運命じゃない

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 金持ちの息子でイケメンで頭脳明晰? そんなものはただの境遇だ。それが俺に何か関係あるか? 俺の努力で勝ち得たものではない。  まぁ、勉強は努力しているが、それでも地頭がいいからそこまでガリ勉しているわけでもない。あの君嶋も元々の運動神経があるのかもしれないが、努力している男だ。真凛もあいつの努力を知っているから多少なりとも誇らしいのだろう。だから無碍にできないわけだ。 「大輝くん……」 あと少しで自宅前というところで、後ろから声をかけられた。ふり返ると真凛だった。  俺は反応に迷ったが、好きな真凛の姿を見れた喜びが素直に顔に出たようで、真凛はそれを見て同じく笑顔になった。 「……さっきはごめん。その……怒ってない?」  真凛は笑顔を引っ込めて、俺の気持ちを伺うようにもじもじと、うつむき加減で上目遣い。たまらなく可愛いな。 「なにが? てかスマホ持ってんの?」 「えっ? あ、さっきの? あれはお母さんの。お母さんが間違えて私のバッグに入れちゃって、さっき職場に渡しに行ったの。バスならすぐだから……」  そういうことだったのか。君嶋はなんで一緒だったんだ?  俺の心の疑問が伝わったのか、口にしていないのに真凛は答えた。 「瑛太は同じバスで練習に行った。大きなサッカースクールのクラブにも入ってるから……」  ほう、真凛は一人で俺の家に来たわけだ。勇気があるな。俺にはない勇気だ。    俺は真凛の勇気ある行動が嬉しかった。
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