幼馴染なんて単なる偶然だ。運命じゃない

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「真凛はスマホを持たないのか?」俺は聞いた。 「うん……受験に合格したらそのお祝いにって」 「ふうん。じゃあ、夏休み俺と勉強しない?」 「いいの?」  当たり前だろ。真凛は顔を上げてキラキラした目で俺を見た。目には電飾でも入っているのか? 潤んで太陽を反射させている瞳が可愛さを100倍くらいに高めている。 「それよりさ、明日花火大会だろ?」 「あっ、……うん……」  なんだ? 電源が落ちたか? 一気に目が曇ったぞ。 「午後から図書館行って勉強したあと、夕方から一緒に行かない?」  俺は学校の玄関でできなかった誘いをかけた。  真凛の顔は曇ったまま、さらにうつむいて返答に詰まっている様子だ。俺は好きな女が困っていることに喜びを感じる性癖はない。 「約束があるのか?」 「……ていうか、毎年家族で行くの。その……隣ん()と行くのが恒例で……」  つまりは君嶋一家と行くと言うことか? クソッ! 真凛の浴衣姿を目にできないのか? 「そうか。でも途中で抜け出したりとかできない? 俺は真凛と花火を見たいな」  言ってやった! 言ってやったぞ! どうだ? これでオーケーしてくれたら君嶋よりも俺に惚れてるということだ。 「うん……いいよ」  よし! 君嶋よ、さらばだ。 「じゃあ花火大会が始まるのは7時だろ? 8時に花池はどうだ?」  花池とは、花火大会のある河原の端にある、こじんまりとした池のあるところだ。学校から河原に出るとすぐのところにあるため、生徒同士の待ち合わせによく使われている。  真凛は少し考えた様子を見せた後、笑顔で承諾した。  俺はそのまま自宅へは帰らず、ちゃんと真凛を家まで送った。ここまで来てくれた彼女を放置して帰宅することなんてできないだろ?
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