幼馴染なんて単なる偶然だ。運命じゃない

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 翌日の昼、図書館へ行ったら真凛はいなかった。その代わりに緑川がいた。 「あ! 守山くん」  呼び止めたぞ? 声をかけられるとは思わなかった。なんの用があるって言うんだ。俺は不満を顔に出したまま、手を上げて俺を見ている緑川に近づいた。 「真凛は来れないって。でも約束は守るって。詳しいことは知らないけど、それだけ伝えて欲しいって言われて……」 「……真凛はマジでスマホを持ってないのか?」俺は返答をせずに質問で返した。 「え? うん。本当に持ってないよ。真凛に連絡するときは家の電話にしてる。今どきそんな子いないよね〜」  緑川の表情からも嘘ではないようだ。それから緑川は、俺と待ち合わせでもしていたかのように日常会話を始めた。お前と喋ってる暇はないんだが。それでも紳士な俺は15分程度相手をしてやった。声をかけてきたときは俺と話すことを嫌そうにしていたのに、俺が近づいた途端に顔を赤らめて俺の目を見なくなった。この変化は何度も見て飽きている。  俺は親から電話がかかってきたような振りをして、その場を抜け出した。  あばよ緑川。伝言役はご苦労だった。
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