幼馴染なんて単なる偶然だ。運命じゃない

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 8時になって花池で待っていると、同じ学校の生徒にじろじろと見られた。俺を見て面白いか? 俺を見ながらヒソヒソと話している様子が不快だ。陰口は慣れているが、不快であることには変わりない。 「ごめんね。待った?」  真凛が来た。俺は思わず笑顔になる。可愛い……。まさか本当に浴衣で来るとは……。俺のために? 一瞬そう思ったが、家族と来ていることを思い出して自意識過剰は引っ込めた。 「どれくらい一緒にいれんの?」真凛を誘導して歩き出した後に俺は聞いた。 「えっと、30分くらいなら大丈夫」 「ふうん」  物足りねーな。でもいいか。真凛の浴衣姿を見ることができたんだから。  俺たちは、花火は見ずに出店を見て歩いた。真凛は声をあげて楽しそうにしている。請われるがままにかき氷や綿あめなどを買ってやった。 「ありがとう。すっごく楽しい! 大輝くんと会えてよかった〜」 「俺も嬉しいよ」  ははは。マジでカップルだろ? これを恋人同士と言わずになんと言う? 「なんか、見られてるね」真凛が気恥ずかしそうな様子で言う。  俺は何のことか一瞬わからなかったが、見渡すと同じ学校の連中が俺たちを見ていることに気がついた。  何の用だよ。カップルなんて珍しくもねーだろ? 周りを見ろよ。夏のセミのようにうようよいるぜ。  そこで俺は気がついた。そうか。真凛はサッカーの試合で観衆を前に君嶋から告られたんだっけ? それを気にしているのか? 可哀想に。何を言われても俺が守ってやるからな。  そのとき、当の君嶋がボールを蹴っている姿を目に留めた。  キックターゲットだ。エースストライカーだと知られているからか、単なる出店とは思えない人数が集まっている。
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